請負点検 ― 偽装請負・二重派遣のリスクを点検します
請負契約(業務委託・委任・準委任を含む)で人手を確保しているものの、「これは偽装請負にあたらないだろうか」と不安を感じておられる事業者様へ。労働局で派遣事業・偽装請負を担当していた元労働局職員である社会保険労務士が、行政が実際にどこを見て判断するのかという視点から、契約書と現場の運営実態を点検いたします。
このページでは、労働者派遣と請負の違いから、偽装請負の判断基準、令和8年1月に施行された取適法(旧・下請法)との関係、適正な請負とするためのポイントまでを解説します。
1. 労働者派遣事業と請負事業の違い
労働者派遣事業とは
労働者派遣とは、労働者派遣法に次のとおり規定されています。
難しい表現ですが、要点は「自社の労働者を、他社(派遣先)の指揮命令のもとで働かせる」という点にあります。
請負事業とは
請負(業務委託を含む)には、民法上の「請負契約」「委任契約」「準委任契約」と、民法には規定されていないものの一般的に行われている「業務委託契約」があります。このうち、偽装請負の対象となるかどうかは契約の種類を問いません。
| 契約形態 | 内容 |
|---|---|
| 請負契約(民法632条) | 仕事の完成に対して報酬を支払う契約 |
| 委任契約(民法643条) | 当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生じる契約 |
| 準委任契約(民法656条) | 法律行為となる事務処理以外の業務の遂行を目的に対価が支払われる契約 |
| 業務委託契約(法律用語ではない) | 委託者が受託者に対して、何らかの業務を委託する内容の契約 |
つまり「偽装請負の対象となる請負契約」とは、契約の種類を問わず、発注者が行うべき業務の全部または一部を他社に委託する契約全般を意味します。
違いのポイント
労働者派遣事業と請負事業の違いは、注文主(発注者・委託者)から請負業者(受託者)の労働者に対し、直接指揮命令を行うことができるかどうかがポイントとなります。
2. 偽装請負・二重派遣とは
偽装請負とは
偽装請負とは、形式上は請負・委託として契約を締結しているものの、発注者側から指揮命令等を受けて受託者の労働者が作業を行う実態となっており、実質的に労働者派遣となっている状態をいいます。
厚生労働省は、偽装請負を大きく次の4つのパターンに整理しています。自社がどれかに当てはまっていないか、確認してみてください。
二重派遣とは
偽装請負と似た形態として「二重派遣」があります。二重派遣とは、派遣先が、派遣元事業主から労働者派遣を受けた労働者を、さらに業として他の派遣先に派遣することをいいます。派遣の許可を取得していない会社が同じことを行った場合も、当然、二重派遣に該当します(この場合、そもそも許可なく派遣を行っている時点で労働者派遣法違反となります)。
派遣元が知らない間に、二重派遣となる場合とは
通常、二重派遣は「派遣先が故意に他の派遣先へ派遣すること」を指し、派遣元もそれを認識していることが多いのですが、派遣元が意図せず、結果的に二重派遣となってしまう場合もあります。
例えば、派遣先が請負会社であり、注文主から請け負っている業務に派遣労働者を派遣すること自体は労働者派遣法に抵触しません。しかし、そこで注文主から派遣労働者に対して少しでも指揮命令が発生した場合は、二重派遣となります。
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3. 取適法(中小受託取引適正化法)とは
請負事業については、偽装請負として労働局から指導を受けるほかに、取適法違反として公正取引委員会等から指導・勧告を受ける可能性もあります。
・親事業者 → 委託事業者
・下請事業者 → 中小受託事業者
・下請代金 → 製造委託等代金
取適法の概要
取適法は、委託事業者(発注者・委任者・委託者等)が中小受託事業者(受注者・受任者・受託者等)に業務を委託する場合に、その優越的な立場を利用して代金を減額したり支払いを遅らせたりする濫用行為を取り締まることにより、取引の公正化を図り、中小受託事業者の利益を保護することを目的とする法律です。昭和31年に下請法として制定され、令和8年1月1日施行の改正により、適用対象の拡大と禁止行為の追加が行われました。
主な改正点
取適法の適用要件
取適法の適用を受けるには、①取引内容要件と②事業者の規模に関する要件(資本金基準または従業員数基準)の双方を満たす必要があります。
① 取引内容要件(5類型)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 製造委託 | 物品の販売・製造を請け負う事業者が、規格・品質・形状・デザイン等を指定して、他の事業者に製造・加工等を委託すること(改正により、金型以外の型も対象に含まれます) |
| 修理委託 | 物品の修理を請け負う事業者が、その修理を他の事業者に委託すること、または自社使用物品の修理の一部を委託すること |
| 情報成果物作成委託 | ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザイン等の情報成果物の提供・作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託すること |
| 役務提供委託 | 運送やビルメンテナンス等のサービス提供を請け負った事業者が、その役務の提供を他の事業者に委託すること(建設業法上の建設工事は対象外) |
| 特定運送委託新設 | 物品の販売、または物品の製造・修理・情報成果物の作成を請け負う事業者が、その取引の相手方に対する運送の全部または一部を他の事業者に委託すること |
② 資本金基準
【製造委託・修理委託・特定運送委託・情報成果物作成委託(プログラムの作成)・役務提供委託(運送、倉庫における保管、情報処理)の場合】
| 委託事業者 | 中小受託事業者 | |
|---|---|---|
| 資本金3億円超 | → | 資本金3億円以下(個人事業主を含む) |
| 資本金1千万円超3億円以下 | → | 資本金1千万円以下(個人事業主を含む) |
【上記を除く情報成果物作成委託・役務提供委託の場合】
| 委託事業者 | 中小受託事業者 | |
|---|---|---|
| 資本金5千万円超 | → | 資本金5千万円以下(個人事業主を含む) |
| 資本金1千万円超5千万円以下 | → | 資本金1千万円以下(個人事業主を含む) |
③ 従業員数基準(改正により新設)
資本金基準に該当しない場合でも、次の従業員数基準に該当すれば取適法の対象となります。いずれかの基準を満たせば適用対象となる点にご注意ください。
| 取引の区分 | 委託事業者 | 中小受託事業者 | |
|---|---|---|---|
| 製造委託・修理委託・特定運送委託・情報成果物作成委託(プログラムの作成)・役務提供委託(運送、倉庫における保管、情報処理) | 常時使用する従業員300人超 | → | 常時使用する従業員300人以下(個人事業主を含む) |
| 上記を除く情報成果物作成委託・役務提供委託 | 常時使用する従業員100人超 | → | 常時使用する従業員100人以下(個人事業主を含む) |
委託事業者の4つの義務
取引の公正化及び中小受託事業者の利益保護のため、委託事業者には次の4つの義務が課せられています。
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 支払期日を定める義務(第3条) | 給付を受領した日(役務提供委託・特定運送委託の場合は役務の提供を受けた日)から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に支払期日を定めること |
| 発注内容等の明示義務(第4条) | 製造委託等をした場合は直ちに、給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法等を、書面または電磁的方法により明示すること(「4条明示」) |
| 遅延利息を支払う義務(第6条) | 支払期日までに代金を支払わなかった場合、遅延利息を支払うこと |
| 書類等の作成・保存義務(第7条) | 取引に関する書類等を作成し、2年間保存すること |
委託事業者の禁止事項(11項目)
委託事業者には次の11項目の禁止事項が課せられています。たとえ中小受託事業者の了解を得ていても、また委託事業者に違法性の意識がなくても、これらの規定に触れる場合は取適法違反となります。
| 禁止事項 | 概要 |
|---|---|
| ①受領拒否(第5条第1項第1号) | 注文した物品等の受領を拒むこと |
| ②製造委託等代金の支払遅延(第5条第1項第2号) | 受領後60日以内に定めた支払期日までに代金を支払わないこと。手形の交付や、支払期日までに代金相当額の金銭と引き換えることが困難な電子記録債権・一括決済方式の使用も、これに該当します |
| ③製造委託等代金の減額(第5条第1項第3号) | あらかじめ定めた代金を減額すること |
| ④返品(第5条第1項第4号) | 受け取った物を返品すること |
| ⑤買いたたき(第5条第1項第5号) | 類似品等の価格または市価に比べて著しく低い代金を不当に定めること |
| ⑥購入・利用強制(第5条第1項第6号) | 委託事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること |
| ⑦報復措置(第5条第1項第7号) | 公正取引委員会、中小企業庁または事業所管省庁に知らせたことを理由に、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること |
| ⑧有償支給原材料等の対価の早期決済(第5条第2項第1号) | 有償で支給した原材料等の対価を、その原材料等を用いた給付に係る代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること |
| ⑨不当な経済上の利益の提供要請(第5条第2項第2号) | 中小受託事業者から金銭、労務の提供等をさせること |
| ⑩不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第5条第2項第3号) | 費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること |
| ⑪協議に応じない一方的な代金決定(第5条第2項第4号)新設 | 中小受託事業者から価格協議の求めがあった場合に、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりすること |
取適法における調査・指導
公正取引委員会及び中小企業庁は、取引が公正に行われているかを把握するため、毎年、委託事業者・中小受託事業者への書面調査を実施しており、必要に応じて事務所等を訪問し、取引記録などの帳簿書類を確認したうえで、不備があれば委託事業者に対し指導を行います。改正により、事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言の権限が付与されています。
4. 偽装請負と取適法との関係
取適法は、委託事業者が中小受託事業者に対し優越的な立場を利用して代金の減額や支払遅延などの濫用行為を行っていないかを公正取引委員会等が取り締まるのに対し、偽装請負は、形式上は請負・委託であっても実態が労働者派遣となっていないかを労働局が取り締まります。
それぞれの行政機関の所掌には重なる部分があるように見えますが、実際には公正取引委員会は取適法への抵触のみに、労働局は実態としての労働者派遣への該当のみに焦点を当てて指導監督を行っており、いわゆる縦割りの運用となっています。公正取引委員会が取適法に基づく指導を行う際に偽装請負について指導することはなく、労働局が偽装請負について指導を行う際に取適法について指導することもありません(それぞれの行政に情報提供が行われる場合はあります)。
5. 偽装請負とみなされるポイント(労働省告示第37号)
6. 当事務所が提供するサービス・料金
当事務所では、お客様の請負事業の現状をお伺いしたうえで、お客様の負担をできる限り抑えつつ、偽装請負とならないための具体的な対策をアドバイスいたします。労働局への対応方法についてもレクチャーいたします。
料金のご案内
- 労働局需給調整事業部(課)から調査は受けていないものの、自社の請負事業(委任・準委任・業務委託契約を含む)が偽装請負として指導される可能性がないか確認したい事業者様が対象です。
- 現在実施している請負事業について、契約書・請求書・実際の運営方法等を確認し、労働局から偽装請負として指導を受けないための契約書・請求書の作成方法や運営方法についてアドバイスいたします。
- 下記報酬額のほか、遠方の場合は交通費等を別途頂戴する場合があります。
- 標準的な報酬額は下記のとおりです。実際の業務内容・範囲によって異なりますので、お話を伺ったうえでお見積りいたします。
| サービス内容 | 報酬額 |
|---|---|
| 請負事業(委任・準委任・業務委託契約を含む)点検 | 150,000円(税別)〜 |
まず自社の状況を確かめてから相談したい方へ
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