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派遣会社 売上・定着率セルフ診断

派遣会社の売上は、稼働人数 × 派遣料金 × 稼働時間で決まります。そして、その稼働人数を支えているのが定着です。本診断は、売上のつくり方(5問)定着の仕組み(10問)の両面から、貴社の現状をセルフチェックするものです(全15問・30点満点/所要時間の目安:約5分)。

※ 労使協定方式による賃金の最低額など、法令上の最低基準は、売上や定着を考える以前に必ず満たすべき大前提です。本診断は、それを満たしたうえで「どうすれば売上と定着につながるか」を確認するものです。

いま、派遣業界で起きていること

派遣事業の年間売上高は9兆9,005億円(前年度比9.4%増)、派遣労働者数は約220万人と、市場は広がっています。その一方で、働き手が派遣会社に求めているのは「続けられること」です。パーソルテンプスタッフが自社の派遣スタッフ108,980人を対象に行ったアンケート(2026年1月実施、回答40,430人。集計は就業期間1年以上の方に限定)では、同社に求めることの第1位が「現在の契約の終了が決まったとしても切れ目なく仕事を紹介してくれる」で44%。第2位(16%)を大きく引き離し、この順番は4年連続で変わっていません。しかも、この項目の実現度は58%で、第2位・第3位(74%・71%)を下回っています。
一方で、派遣会社が用意した支援が使われていないという実態もあります。日本人材派遣協会の調査(2025年8月〜9月実施、有効回答9,767人)では、eラーニングは「提供されている」が72.1%であるのに対し、実際に利用したのは45.3%。キャリアコンサルティングは提供54.1%に対し、利用は10.3%にとどまります。支援が「特にない」と答えた方も41.7%でした。
日本人材派遣協会の調査でも、有期契約から無期雇用派遣に転換した理由の第1位は「同じ派遣先の同じ就業部署で継続して就業できるから」64.2%(N=804)でした。
案件を取ることと、スタッフが働き続けられる仕組みをつくることは、切り離せない関係にあります。
出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」/パーソルテンプスタッフ「派遣スタッフへのアンケートで40,430人が回答」(2026年4月15日公開)/一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」(2025年8月12日〜9月18日実施、有効回答9,767)

お答えいただくにあたって

各設問は、上から 2点/1点/0点 の順に並んでいます。2点=会社としての仕組みがあり実行できている1点=実行しているが担当者任せ・部分的0点=できていない、または把握していないという考え方です。いちばん近いものをお選びください。

第1部 売上のつくり方(5問・10点)

第1章 売上の見える化と単価の協議

Q1. 毎月の売上を「稼働人数」「派遣料金」「稼働時間」の3つに分けて把握し、売上が前月から増えた(減った)ときに、どの派遣先で・どの要素(人数・単価・稼働時間)が変わった結果なのかまで説明できますか。

売上を3つの要素に分けると、「人が減ったのか」「単価が下がったのか」「残業が減ったのか」で打ち手が変わります。総額だけを見ていると、原因が分からないまま「営業を増やす」という対策になりがちです。

新しい仕組みは要りません。請求データから、派遣先別に「稼働人数」「平均派遣料金」「総稼働時間」の3列を並べた表を作るところから始められます。

直近3か月の売上を、派遣先別に「稼働人数・平均派遣料金・総稼働時間」の3列で並べてみる

Q2. 派遣料金の改定を、最低賃金の改定に合わせるだけでなく、派遣労働者の派遣先での評価・担当業務の範囲・責任の変化といった材料を整理したうえで、時期を決めて協議していますか。

日本人材派遣協会が派遣先の担当者2,136名に行った調査では、過去1年間に派遣会社から値上げの依頼を受けた派遣先は59.4%。そのうち77.9%(1,269名が母数)が値上げに応じたとされています。応じた理由は「社会的な要請」73.8%、「派遣社員の働きぶりへの満足」42.8%(複数回答)でした。つまり、働きぶりを言葉にして伝える材料が、協議の中身になり得ます。

年に1回など時期を決めて、①担当業務の範囲がどう広がったか ②派遣先の担当者から聞いた評価 ③勤怠の安定 を1枚にまとめておくと、最低賃金以外の根拠を示せます。

派遣元の取組例

厚生労働省の委託調査(2009年公表)では、派遣元が実際に行っている取組として、次のような例が紹介されています。

  1. 就業開始時と現時点の仕事内容を派遣先に確認し、仕事の内容が変わっていること、労働時間など負担が増えていることを示して、派遣料金の引上げを相談している
  2. 就業当初と現在の業務内容、増えた業務、アピールポイントを記載した業務報告書を作成し、派遣先に提出して協議したところ、時給アップにつながった
  3. 派遣料金の改定に企業の納得を得るには根拠を示すこと。長く働いているというだけでは足りず、処理できる量が増えた、扱う書類が増えたといった裏づけが必要である
  4. 派遣先責任者に依頼して年1回、勤務態度・スキル・コンプライアンス意識・派遣先の意見等のアンケートを実施し、評価の高いスタッフの派遣料金アップの材料として活用している

協議の時期については、発注者との価格交渉一般について、公正取引委員会の指針(労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針)が、契約更新時や最低賃金の改定幅が見えた時期などを交渉の機会として挙げています。時期をあらかじめ決めておく際の考え方として参考になります。

なお、2026年10月1日から適用される派遣先指針(令和8年厚生労働省告示第201号)では、派遣先が料金交渉に一切応じない場合は、労働者派遣法第26条第11項の趣旨を踏まえた対応とはいえないことが明記されます。交渉を持ちかけること自体は、遠慮すべきことではなくなりました。

出典:一般社団法人日本人材派遣協会「派遣先担当者調査結果」(2025年11月7日公表、調査期間2025年6月29日〜7月3日、有効回答2,136)

派遣先を1社選び、スタッフの担当業務の広がりと派遣先からの評価を1枚にまとめる

売上を「稼働人数・派遣料金・稼働時間」の3つに分けて見ると、どこで伸び悩んでいるのかが分かり、打ち手が絞れます。また、派遣料金の改定は、最低賃金に合わせるだけでなく、担当業務の広がりや派遣先からの評価という材料を用意することで、協議の中身が変わります。調査では、値上げを依頼された派遣先が59.4%、そのうち77.9%が応じたとされています。値上げの申し入れが一律に断られているわけではなく、具体的な根拠を整理して協議する余地があることが分かります。

第2章 労働者派遣契約の継続と取引先の広げ方

Q3. 労働者派遣契約の期間が終わる1〜2か月前までに、派遣先に次の期間も受け入れる意向があるかと、派遣労働者本人に同じ派遣先で就業を続ける意思があるかの両方を確認していますか。

派遣先・本人のどちらの側からでも、更新されない可能性が早く分かれば、次の就業先を探す時間が生まれます。Q14(契約終了前の次の仕事の提案)と直結する設問です。

契約終了日から逆算した確認日をあらかじめカレンダーに登録しておくと、担当者が替わっても同じ時期に動けます。

すべての労働者派遣契約について、契約終了日の2か月前を、派遣先と本人の双方に確認する日としてカレンダーに登録する

Q4. 既存の派遣先について、今後スタッフを増やせそうな部署・職種や、人手が足りていない部署がないかを、担当者任せにせず会社として把握し、提案していますか。

派遣先ごとに「現在契約している部署」「まだ契約していない部署・職種」「先方の困りごととして聞いたこと」を一覧にし、四半期ごとに見直す形が取り組みやすいと思われます。

一覧にしておくと、担当者が替わっても引き継げます。また、聞き取る内容を決めておくことで、日常の訪問のなかで自然に情報が集まります。

既存の派遣先ごとに、現在契約していない部署・職種を書き出し、人手の状況を聞いてみる

Q5. 現在供給できる人材の「職種・スキル・地域・勤務時間」を把握し、その条件と採用ニーズが合う企業を優先して新規営業していますか。

受注しても人材を供給できなければ、派遣先の信頼を損ないます。また、無理に埋めようとすると、本人に合わない仕事を紹介することになり、早期離職につながります。新しい仕組みは要りません。次の3つの手順で整理できます。

① 今すぐ紹介できる人を一覧にする

大切なのは、登録者数ではなく今すぐ就業できる人を数えることです。ある職種の登録者が50人いても、実際に今動けるのが3人なら、営業上の供給力は3人です。職種・経験年数・資格・希望地域・通勤できる範囲・勤務時間帯・夜勤の可否・就業できる日・希望時給を、1枚の表にまとめます。

② 採用ニーズがありそうな会社を探す

求人広告を出している、自社の採用ページで募集している、新しい工場や倉庫を開設した、繁忙期に入る、既存の派遣先から「別の職種も足りない」と聞いた——といった情報が手がかりになります。

③ 突き合わせて優先順位をつける

「今すぐ出せる人がいて、相手も採用中で、地域も勤務時間も合う」会社を最優先にします。次が「人はいるが、今募集しているかは分からない」会社。「出せる人がいない、条件も合わない」会社は、今は追いません。

以下は物流系の例です。ご自身の扱う職種に置き換えてお読みください。

会社求人ニーズ自社の人材と合うか営業の優先
A物流フォーク3名募集中・東大阪・日勤◎ 今すぐ出せる人がいる最優先
C食品倉庫作業募集中・大阪市・日勤○ 出せる可能性がある
B倉庫フォーク1名・八尾・夜勤× 夜勤に対応できる人がいない今は追わない
D物流現在募集なし・東大阪△ 人はいるがニーズが不明今は追わない

この形にすると、「今日は何件回った」ではなく「条件の合う会社に何件当たった」という管理に変わります。

在籍スタッフと登録者の職種・地域・稼働可能な時間帯を集計する

労働者派遣契約が更新されるかどうか、そして本人が就業を続ける意思があるかどうか——この2つが早く分かるほど、次の手を打つ時間が生まれます。終了の1〜2か月前に双方へ確認するという時期を、担当者の判断ではなく会社の決まりごとにしておくことが出発点です。あわせて、既存の派遣先で人手が足りていない部署を会社として把握すること、新規の営業先を「今すぐ供給できる人材」で絞ることが、無理のない売上の伸ばし方につながります。

第2部 定着の仕組み(10問・20点)

第3章 定着状況の把握

Q6. ある月に就業を開始した人のうち、30日後・90日後に何人が就業を続けているか(その割合)を、派遣先別・職種別に把握していますか。

どの派遣先で、どの職種で早期離職が起きているのかが分かると、対策の対象が絞れます。逆に、全体の人数だけでは「なんとなく辞めている」という印象で終わってしまいます。

難しい集計は必要ありません。就業開始日と終了日の一覧があれば作成できます。まず直近1年分について、①30日以内に終了した人数 ②90日以内に終了した人数 を、派遣先別に数えるところからです。

なお、割合だけを見ると誤解が生じます。就業開始が3人の月に1人辞めれば67%、2人の月に全員残れば100%となり、月ごとに大きく振れるためです。必ず「10人中8人(80%)」のように人数と割合を並べて記録し、会社全体の推移は四半期ごとにまとめて見るようにしてください。派遣先別・職種別は、率にせず人数のまま見るほうが実用的です。「A社で今年度3人が30日以内に終了している」と分かれば、対策の対象は絞れます。

直近1年で30日以内・90日以内に就業が終了した人数を、派遣先別に数える

早期離職への対策は、どこで起きているのかが分からないと絞れません。ある月に就業を開始した人のうち、30日後・90日後に何人が就業を続けているかを派遣先別・職種別に出してみると、特定の派遣先や職種に偏っていることが少なくありません。就業開始日と終了日の一覧があれば作成できますので、まず直近1年分から始めてみてください。

第4章 就業前と就業初期のマッチング

Q7. 派遣先が決まってから就業を開始するまでの間に、実際の仕事内容や職場の様子(人の多さ、忙しい時間帯、雰囲気など)を派遣先の職場に出向いて確認し、良い面だけでなく大変な面も含めて派遣スタッフ本人に伝えていますか。

「聞いていた話と違う」は、早期離職の代表的な理由です。伝えにくい情報ほど先に伝えておくほうが、結果として長く続く傾向があります。

新しい様式を作る必要はありません。就業条件明示書の項目(業務内容・就業場所・就業時間・指揮命令者など)を出発点にして、「誰が教えてくれるか」「忙しい時間帯」「職場の雰囲気」を足すだけで、就業前の確認シートになります。小さな会社ほど取り組みやすい方法です。

日本人材派遣協会の調査(2025年8月〜9月実施、有効回答9,767人)では、営業担当者とのやりとりの内容として最も希望が多いのは「就業条件に関すること」で66.3%。これに対し、実際に行われているのは52.1%でした。条件や仕事の実態をきちんと確認したいという希望は、就業中も含めて一貫して高い水準にあります。

なお、厚生労働省の委託調査(派遣先企業の管理者515名、5つまで選択)では、派遣先が派遣会社を選ぶ基準として「マッチングの精度」が44.5%で第4位に挙げられています(第1位はコンプライアンス53.8%、第2位は過去によく使っている48.9%、第3位は対応がスピーディ46.2%)。就業前に仕事内容と職場の実態を確認することは、本人の納得のためだけでなく、派遣先からの評価にも直結します。

就業条件明示書の項目に「誰が教えるか」「忙しい時間帯」「職場の雰囲気」を足した確認シートを作る

Q8. 就業を開始する前に、労働者派遣契約に定めた指揮命令者に加えて、実際に仕事を教える方と、分からないときに質問できる方まで派遣先に確認し、派遣スタッフ本人に伝えていますか。

指揮命令者は、労働者派遣契約の記載事項であり、就業条件明示の対象でもあります。つまり書面上は必ず決まっています。ところが、契約上の指揮命令者と、日常的に仕事を教えてくれる方が別人であることは珍しくありません。

したがってこれは、派遣先に新しい制度を作らせる話ではなく、もともと決めている項目を、実態に合わせて一段細かく確認する話です。就業前の打合せで「初日は誰が教えてくださいますか」「その方が不在のときは誰に聞けばよいですか」の2つを確認しておくと、誰に聞けばよいか分からない状態を減らすことができます。

次の就業開始前の打合せで「初日は誰が教えるか」「不在時の質問先は誰か」を確認する

Q9. 就業開始後の早い時期に、派遣スタッフ本人に連絡し、「聞いていた仕事内容と違わないか」「業務量に無理はないか」「職場の人間関係で困っていないか」を、あらかじめ決めた時期と項目で確かめていますか。

厚生労働省の委託調査(「平成20年度 労働者派遣事業における雇用管理改善推進事業報告書」2009年3月公表)では、初期のフォローで確認する項目として「職場の雰囲気」「業務内容の相違」「人間関係」が挙げられています。まずこの3つを確認項目として決めるだけでも、担当者による差がなくなります。

確認する時期については、たとえば「初日・1週間後・1か月後」のように決めておく運用例があります。ただし、この時期そのものが定着率を高めるという実証データがあるわけではありません。あくまで、担当者任せにしないための運用の一例です。

重要なのは、聞いて終わりにしないことです。同じ資料では、聞き取った内容を派遣先に確認し、業務内容の改善などを協議するところまでが一続きのものとして扱われています(Q11につながります)。

就業開始後に本人へ確認する時期と項目を決め、紙1枚にまとめる

早期離職の理由として実際に多いのは、職場の人間関係や仕事内容が「聞いていた話と違った」というものです。就業前に大変な面も含めて伝えること、実際に仕事を教えてくださる方と質問先を確認しておくこと、就業直後に決めた項目で本人の状態を確かめること——この3つは、大きな費用をかけずに始められ、早期離職の原因に直接働きかけられる項目です。

第5章 就業後の状態把握と派遣先との連携

Q10. 就業が落ち着いた後も、派遣スタッフ本人に、仕事内容の変化・人間関係・休暇の取りやすさ・働き続ける意思などを、会社として決めた頻度で継続的に確認していますか。

日本人材派遣協会の調査(有効回答9,767人、うち現在就業中5,523人)では、営業担当者との連絡頻度について、現状は「2〜3か月に1回」が51.5%で最も多く、希望も47.8%とほぼ同水準です。一方で「1か月に1、2回」を希望する方は28.7%で、現状の17.7%を上回っています。ただし、頻度を増やすほど定着が良くなるという関係が確認されているわけではありません。まずは頻度を会社として決め、連絡が途切れないようにすることが出発点になります。

厚生労働省の委託調査(2009年公表、派遣先管理者515名)では、派遣元担当者の訪問が「1か月に1回」の場合、派遣スタッフが期待どおりの期間勤め続けている割合は40.2%(全体36.9%)であるのに対し、「半年に1回以下・まったくない」場合は17.1%にとどまります。仕事ぶりへの満足も、全体63.7%に対し45.7%と低くなっています。頻度の多さそのものより、連絡が途切れていないことが分かれ目です。

ただし、内容が伴わなければ意味がありません。日本人材派遣協会の調査では、営業担当者とのやりとりの内容として、世間話・雑談は現在32.6%行われている一方で、希望する人は18.2%にとどまります。逆に、新たな就業先の提案は現在15.0%に対し希望は35.2%、キャリアアップの支援は現在5.9%に対し希望は22.1%でした。「最近どうですか」で終わらせず、仕事やキャリアの具体的な用件を持って連絡することが求められています。

訪問を望まないスタッフにはメール等でやりとりする、担当者が不在でも対応できる窓口を置く、といった事例もあります。年次有給休暇の取りやすさも、この確認項目に含めておくとよいと思われます。

本人への連絡の頻度を会社として決め、記録の残し方を統一する

Q11. スタッフから就業上の問題や不満が出たとき、あらかじめ派遣先と決めておいた窓口・進め方に沿って改善を協議できる仕組みがありますか。

派遣先は、派遣労働者から苦情を受けたときは派遣元に通知し、派遣元との密接な連携のもとで、誠意をもって遅滞なく処理することとされています(労働者派遣法第40条第1項)。また指針では、苦情の処理方法や連携の体制を、あらかじめ労働者派遣契約で定めることとされています。

つまり「問題が起きたので申し入れに行く」のではなく、「最初に決めていた連携のルールに沿って確認する」という形に変えられます。これができると、担当者が協議を切り出しやすくなります。

進め方

  1. 契約開始時に「改善の窓口」を決める(派遣元側:営業担当・派遣元責任者/派遣先側:現場担当・派遣先責任者/連絡方法/協議する者)
  2. 「スタッフが◯◯と言っています」で持ち込まず、事実 → 就業への影響 → 改善案 の順に整理する
  3. 「要求」ではなく「選択肢」を持っていく(A案・B案を示し、派遣先にゼロから考えさせない)
契約開始時に決めておく「改善の窓口」の項目(誰が・どこへ・どの方法で)を決める

Q12. 賃金がどのような考え方で決まっているのか、そして、どうすれば上がるのかを、担当者によらず、派遣スタッフ本人が理解できる言葉で説明できるようにしていますか。

待遇に関する事項の説明は、法令上の手続でもあります。本診断で見ているのは、その書面をお渡ししたうえで、内容を口頭で説明できる状態になっているかどうかです。書面を渡すだけでは、納得にはつながりにくい面があります。

「同じような仕事をしている世の中の平均的な賃金と比べてどうなのか」「どうすれば上がるのか」——この2点を、担当者が自分の言葉で答えられるようにしておくと、Q13(希望・成長の反映)と自然につながります。紙1枚にまとめておけば、担当者による説明の差もなくなります。

「世の中の平均と比べてどうか」「どうすれば上がるか」を説明する紙を1枚用意する

就業が落ち着いた後の連絡は、担当者任せになりがちです。調査では、1か月に1、2回の連絡を希望する方が28.7%で、実際に行われている17.7%を上回っています。また、営業担当者とのやりとりに希望されている内容は、就業条件に関すること66.3%、派遣先とのトラブルへの対応40.1%、新たな就業先の提案35.2%であり、様子をうかがうだけでは足りません。問題が出たときに担当者個人の力に頼らずに済むよう、派遣先との窓口と進め方をあらかじめ決めておくことが有効です。

第6章 継続就業の支援と離職原因の把握

Q13. キャリアコンサルティングや更新時の面談、教育訓練を通じて把握した本人の希望や、できるようになったことを、次の仕事の選定・担当業務・教育訓練・賃金の見直しに反映していますか。

日本人材派遣協会の調査では、キャリアコンサルティングを「受けられるかどうか知らない・わからない」と答えた方が49.9%(現在就業中5,523人が母数)にのぼりました。受けられると分かっている方(2,506人)のなかでも「受けたことがない」は73.5%です。受けない理由の第1位は「何かよく知らないから」32.7%(4,545人が母数)でした。

提供と利用の差も大きく、キャリアコンサルティングは「提供されている」54.1%に対し、実際に利用したのは10.3%。eラーニングは提供72.1%に対し利用45.3%です。制度として用意することと、本人に届くことは別の問題です。

実施の記録に「本人の希望」「できるようになったこと」の2欄を足し、次の案件を選ぶときと、賃金を見直すときに必ずその記録を見る、という運用にすると、実施が処遇につながります。なお、把握した内容を派遣料金の協議材料として使う場面は、Q2で扱います。

なお、無期雇用がすべての方にとっての正解ではありません。日本人材派遣協会の2025年度調査では、無期契約の派遣社員1,305人のうち「無期雇用を重視する」は40.2%、「無期にこだわらない」は51.0%でした。本人の希望を把握するというのは、無期雇用を勧めることではなく、長く働ける就業先の選び方、派遣元での無期雇用、派遣先での直接雇用といった選択肢のうち、本人が望むものを示せる状態にしておくということです。

また、2026年10月1日適用の改正派遣元指針(令和8年厚生労働省告示第200号)では、キャリアコンサルティングや更新面談等を通じて継続就業の希望などを把握し、評価・教育訓練・キャリアコンサルティング・就業機会の提供を一体的に行う方向が示されています。

面談の記録に「本人の希望」「できるようになったこと」の2欄を足す

Q14. 契約終了が見込まれるスタッフについて、更新されないと分かった時点で本人の希望を確認し、終了前に次の派遣先・仕事の具体的な候補を提案していますか。

これは、調査上もっとも強く求められている項目です。パーソルテンプスタッフが、同社で就業する派遣スタッフ108,980人を対象に行ったアンケート(2026年1月5日〜31日実施、回答40,430人。集計は就業期間1年以上の方に限定)では、同社に求めることの第1位が「現在の契約の終了が決まったとしても切れ目なく仕事を紹介してくれる」で44%。第2位(16%)を大きく引き離しており、この順番は4年連続で変わっていません。

さらに同じ調査では、その実現度も集計されています。第2位・第3位の項目が74%・71%実現できているのに対し、この第1位の項目は58%にとどまります。4万人が回答する規模の会社でも、最も求められていることが最もできていない——裏を返せば、ここを整えられれば差がつきやすい部分だといえます。

いつ確認するか

契約期間は2〜3か月のことも多く、「終了の何日前」と一律に決めるのは現実的ではありません。更新の可否を確認する時期(Q3)に、本人の希望もあわせて確かめるのが確実です。

なお、派遣元指針では、雇用安定措置の希望について、終了の直前ではなく早期に聴取し、十分な時間的余裕をもって着手することが求められています。就業開始後の早い時期に一度確認しておくと、更新されないと分かったときに動きが早くなります。

更新されないと分かったときに、誰がいつ本人の希望を確認するかを決めておく

Q15. 契約が終了した、または退職した派遣スタッフについて、退職した本当の理由を分類して記録し、派遣先別・職種別に同じ理由が繰り返されていないかを定期的に確認していますか。

退職や契約終了の記録が「本人都合」の一語で終わっていると、そこから先の改善の手がかりが残りません。記録としては本人都合と整理されていても、その背景に、会社側で手を打てる原因があることは少なくないと考えられます。

手がかりは、辞める理由よりも、辞めずに済む条件のほうにあります。日本人材派遣協会の調査では、雇用安定措置について希望を聞いたところ(3,989人が母数)、「派遣先での直接雇用」36.8%と「無期雇用で同じ派遣先に派遣」21.0%を合わせ、57.8%が現在の派遣先で働き続けることを望んでいました。有期から無期雇用派遣に転換した理由の第1位も「同じ派遣先の同じ就業部署で継続して就業できるから」64.2%(804人が母数)です。

つまり、辞める理由が語られないのではなく、辞めずに済む理由を拾えていないという面があります。就業中に「この派遣先で続けたいか」を確かめておけば、終了時に理由を問いただす前に手を打てます。

本当の理由は、担当者には語られない

本当の退職理由は、派遣元・派遣先の担当者に対しては、まず語られません。担当者は本人にとって利害の当事者であり、今後の仕事の紹介や、就業先での立場に影響しないかという心配が働くためです。改まった面談の場で「なぜ辞めるのですか」と尋ねても、差し障りのない答えが返ってくることがほとんどです。

実務上有効なのは、派遣元・派遣先を問わず、その方と親しかった人に、それとなく尋ねてもらう方法です。退職前でも退職後でも構いません。同じ職場の同僚、社内で親しくしていた担当者など、利害関係の薄い相手にであれば、本当のところが語られることがあります。

あわせて、次の点も手がかりになります。

  • 就業中(Q9・Q10)に聞いておいた記録のほうが、退職時の説明より実態に近いことがあります
  • 派遣先にも終了の経緯を確認し、本人の説明と突き合わせます
  • 「なぜ辞めるのか」ではなく「どうであればもう少し続けられたか」と尋ねます。責任の追及に聞こえにくく、答えやすくなります
  • 理由を1つに絞らせず、複数挙げてもらったうえで、最も大きかったものを聞きます

分類と、見直しの仕方

分類は細かくする必要はありません。次の程度で足ります。

仕事内容が聞いていた話と違う/職場の人間関係/教えてもらえない・質問しづらい/業務量/賃金・待遇/勤務条件(時間・残業・休日・通勤)/派遣元(自社)の対応/契約条件の変更/本人の事情/派遣先の都合

半年に一度、この記録を派遣先別に並べてください。「A社では仕事内容の相違が続いている」と分かれば、A社についてQ7(就業前の説明)を見直す、というように対策の対象が絞れます。Q6が「どこで辞めているか」を見る設問であるのに対し、Q15は「なぜ辞めているか」を見る設問です。この2つはセットで機能します。

本当の理由を聞き出すには、なお相手と場面に応じた工夫が要ります。個別の事情に応じたやり方はご相談ください。

退職・契約終了の記録に「終了理由」の欄を作り、分類の選択肢をあらかじめ決めておく

面談や教育訓練は実施していても、その結果が仕事や処遇に反映されていなければ、本人には伝わりません。また、契約終了が決まったあとに次の仕事を探すのでは間に合わないことがあります。4万人が回答した大規模なスタッフアンケートでは、派遣会社に最も望むこととして「切れ目なく仕事を紹介してくれること」が突出して挙げられ、しかもその実現度は他の項目を下回っていました。そして、辞めた方の理由を「本人都合」で終わらせずに記録しておくと、同じ理由の離職が繰り返されていないかを確かめられます。どこで辞めているか(Q6)と、なぜ辞めているか(Q15)が分かって初めて、対策の対象が絞れます。

すべての設問にお答えください。

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※ 本診断は、貴社の状況を大まかに把握していただくための簡易的なセルフチェックであり、法的な判断や経営上の適否を確定するものではありません。実際の対応にあたっては、個別の事情に応じた確認が必要となる場合があります。
※ 各設問および診断結果に示した内容は、公表データをもとに組み立てた分析上の傾向であり、統計的に因果関係が証明されたものではありません。
※ 設問によっては、公表データではなく、実務上の整理に基づくものがあります。

※ この点数は、当事務所が設定した「売上・定着の仕組みの実践度」を見るための目安であり、将来の売上高や定着率を予測するものではありません。
多くの項目で、会社としての仕組みが整っています。満点でなかった設問について、あと一段階上げるための進め方を下にまとめました。
整っている項目と、これからの項目が混在しています。下記のうち、取り組みやすいものから着手してください。
取り組めていない項目が多く見られます。すべてを同時に進める必要はありません。まずは下記の「明日からやること3つ」から始めてください。
15問すべてで「会社としての仕組みがあり、実行できている」とのご回答でした。現在の運用を続けながら、下記の3つで内容を確かめてみてください。
  • 就業を開始した人のうち30日後・90日後に就業を続けている人数を、直近1年について派遣先別に出し、差が大きい派遣先を1社選ぶ
  • その派遣先について、就業前の説明内容と実際の業務のずれ、および終了した方の理由を洗い出す
  • 派遣料金の協議材料(担当業務の広がり・派遣先からの評価)を1社分まとめる

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