派遣先均等均衡方式と労使協定方式の違い
2020年4月に派遣法が改正され、派遣会社は、
① 派遣先均等均衡方式により派遣労働者の賃金を支払う
② 労使協定方式により派遣労働者の賃金を支払う
①・②のどちらかの方法により、派遣会社は派遣労働者の賃金を支払わなければいけないこととなりました。
下記の図が、派遣先均等均衡方式と労使協定方式の仕組みを図にしたものです。
まず、左の「派遣先均等均衡方式」とは、派遣契約を締結する前に、派遣先は派遣先で直接雇用される正社員等の賃金及び待遇に関するすべての情報について、派遣会社に情報を提供し、その情報を基に派遣会社は派遣労働者の賃金や待遇を決定する方式をいいます。
次に、右の「労使協定方式」とは、毎年7月〜9月ごろに公表される「職業安定局長通達」という行政文書をもとに、派遣労働者の賃金表となる労使協定を会社の代表者と労働者の代表者で締結し、その締結した労使協定にしたがって、翌年の4月以降の派遣労働者の賃金を支払う方式をいいます。
要するに、めちゃくちゃ砕けた言い方をすると、派遣先均等均衡方式とは、派遣先の正社員の賃金と同じ賃金額を派遣労働者に支払う方式で、労使協定方式は国が公表した派遣労働者専用の賃金表に基づいて派遣労働者に賃金を支払う方式をいいます。
ちなみに、2023年5月現在、派遣会社の約9割は労使協定方式を採用しています(厚生労働省発表データによる)。
労使協定の作成の流れ
① 毎年7月〜9月ごろに、来年の4月から適用することとなる派遣労働者専用の賃金表である「職業安定局長通達」が厚生労働省のホームページに
公開される
↓
② (特に作成時期は決まっていませんが)年が明けた1月ごろから、会社と労使協定を締結するための労働者代表を選出する
↓
③ ②と同時に、会社は4月から適用する労使協定を、①の職業安定局長通達の賃金表を確認しながら作成する
↓
④ ③で作成した労使協定の内容を「会社の代表者」と「②で選出した労働者代表」とで確認し、問題なければ、お互い、労使協定にサインして労使
協定を締結する
※ 労使協定の締結は、必ず3月31日までに行ってください。
↓
⑤ 4月1日から、④で締結した新しい労使協定に基づいて、派遣労働者に賃金を支払う
労使協定に記載しなければいけない事項
派遣法上、労使協定に記載しなければいけない事項は以下の通りです。
① 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲
→ 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を記載
・派遣労働者の賃金の決定に関する事項
② 派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金(以下「一般賃金」という)の額と同等以上の賃金の
額となるものであること
→ 職業安定局長通達で公表されている派遣労働者専用の職種ごとの最低賃金表に示されている時給額よりも高い時給額
を派遣労働者に支払うことを比較して示した派遣労働者用の賃金テーブルを記載すること
③ 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に賃金が改善される
ものであること
→ 派遣労働者の賃金テーブルは派遣労働者の頑張りに応じて昇給するような内容のものを記載すること
(どんなに働いても賃金額が同じとなるような賃金テーブルではダメ!)
④ 公正な評価に基づき賃金額を決定する旨
→ 例えば「派遣労働者と面談して成果目標を設定し、一定期間後に達成状況について改めて面談を行って評価を決める」というよう
に、具体的な評価方法を定めること
⑤ 賃金以外の待遇の決定方法
→ 賃金額については職業安定局長通知に示された額以上の額を支払っておればいいので、それ以外の待遇については「派遣元の派遣
労働者以外の正社員」と「派遣労働者」との間で整合性が図られる待遇を取ることを記載すること
⑥ 段階的かつ体系的な教育訓練
→ 2020年4月以前の派遣法でも規定されていた、教育訓練計画に基づく教育訓練を派遣元は派遣労働者に対して実施する旨
・その他の事項
⑦ 労使協定の有効期間
→ 労使協定の有効期間を記載すること
⑧ 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定
する場合には、その理由
→ 労使協定の対象となる派遣労働者については客観的な基準に基づいたものであれば限定することができる(例えば、職種
や有期雇用か無期雇用の違いなど)が、その場合は、限定した理由を労使協定に記載すること
⑨ 特段の事情が無い限り、一の労働契約の契約期間中に、当該労働契約
に係る派遣労働者について、派遣先の変更を理由として、協定対象派
遣労働者であるか否かを変更しないこと
→ 派遣労働者の待遇決定方式(派遣先均等・均衡方式又は労使協定方式)が、派遣先の変更を理由として、一の労働契約期間中
に変更されることは、所得の不安定化を防ぎ、中長期的なキャリア形成を可能とする労使協定制度の趣旨に反する恐れがある
ことから、特段の事情が無い限り、認められないことを記載すること
労使協定を作成する際の注意事項
・ 労使協定に記載する派遣労働者の賃金額は、必ず、直近の職業安定局長通達の賃金額以上でないと労働局から指導を受けます
→ 例えば、労使協定の有効期間を2年以上としている場合、毎年、公表される職業安定局長通達の賃金額より労使協定に
記載した派遣労働者の賃金額が上回っているか確認しなければいけません。
もし、労使協定に記載した賃金額が、直近に公表された職業安定局長通達の賃金額より下回っており、それが労働局の
調査で発覚した場合は、4月まで遡って賃金を支払うよう労働局から指導を受けます。
・ 上記の「労使協定に記載しなければいけない事項」をすべて記載していなかった場合や記載しているが内容に不備がある場合
は、労使協定を4月まで遡って作成し直すよう労働局から指導を受けます
→ 労働局の調査の際、労使協定の中身は非常に細かくチェックされます。
チェックの結果、労使協定の内容に少しでも不備が見つかれば、労働局から4月まで遡って労使協定を作り直すよう指導
を受けます。
・ 労働者代表の選任方法に不備があった場合、労使協定方式ではなく派遣先均等均衡方式により賃金を支払うよう、労働局から
指導を受ける可能性があります
→ 労働者代表の選任方法は、「投票や挙手等、労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確になる民主的な
手続き」により行わなければいけません。
例えば、会社側が勝手に労働者代表を指名したり、会社側の意向によって労働者代表が選出された場合は、その労使協定
は無効とされ、自動的に派遣先均等均衡方式が採用されてしまうこととなります。
・ 労使協定は、非常に細かいルールに基づいて作成しなければいけません
→ 上記で、労使協定に記載しなければいけない事項を掲載していますが、労使協定の作成にはこれ以外にも非常に細かい
ルールがあります。
例えば、
・ 同じ職種でも、派遣先の地域によって派遣労働者の賃金額を決めなければいけない
・ 同種の職業で大分類と中分類を使い分ける場合は、使い分ける理由を記載しなければいけない
・ 派遣労働者の職務評価の方法を具体的に記載しなければいけない ・・・etc
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しかしながら、労使協定は派遣労働者の方に支払う賃金表となるため、派遣会社様の意向も踏まえた労使協定を作成するためには、やはりある程度の時間を要します。
したがって、労使協定のご依頼はできるだけ早く当事務所にご連絡ください!
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サービス内容 | 報 酬 額 |
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労使協定の作成 | 100,000円(税別)〜 |