派遣元管理台帳
派遣元管理台帳は、何をどう書けば足りるのか
作成していても、記載の仕方を誤っているために調査で指摘を受ける例が少なくありません。記載が漏れやすい箇所は、ほぼ決まっています。
労働局で派遣元管理台帳を実際に点検していた立場から、記載事項の全体像と、調査で見られている点を整理します。
このページの内容
1. 派遣元管理台帳とは(作成の根拠)
派遣元管理台帳は、派遣元事業主が、派遣労働者ごとに、その派遣就業の状況を記録しておくための書類です。労働者派遣法第37条第1項に作成義務が定められています。
作成が求められている趣旨は、派遣元事業主が、派遣先で就業する派遣労働者の雇用主として、適正な雇用管理を行うためのものとされています。
これに対して、作成した台帳を3年間保存しなければならないとされているのは、別の趣旨によります。派遣就業をめぐって紛争が生じたときに事実関係を確認できるようにしておくこと、および行政による監督のために用いられることの2つです。作る目的と、残す目的が違うという点は、実務上おさえておいてよいところです。
調査で最初に確認される書類のひとつです
労働局の調査では、労働者派遣契約書・就業条件明示書・派遣元管理台帳がひと組で確認されます。これらの内容が食い違っていると、そこから他の項目へ確認が広がっていく可能性があります。
2. 派遣先管理台帳との違い
名前が似ているため混同されやすいのですが、作成義務者が異なるだけでなく、記録する内容の性質そのものが違います。派遣元は雇用主として、派遣先は指揮命令を行う者として、それぞれ別の側面を記録します。
| 派遣元管理台帳 | 派遣先管理台帳 | |
|---|---|---|
| 作成義務者 | 派遣元事業主 | 派遣先 |
| 根拠 | 法第37条第1項、則第31条 | 法第42条第1項、則第36条 |
| 記録する立場 | 雇用主として、雇用管理の状況を記録する | 指揮命令を行う者として、就業の実態を記録する |
| 記載事項 | 21の事項 教育訓練を行った日時と内容、キャリアコンサルティングを行った日と内容、雇用安定措置の希望聴取と実施内容、社会保険の被保険者資格取得届の提出の有無など、雇用主として行う雇用管理の記録が多く含まれます。 | 17の事項 派遣就業をした日、その日ごとの始業・終業した時刻及び休憩した時間、従事した業務の種類、責任の程度、派遣就業をした場所及び組織単位、苦情の処理に関する事項、派遣先が行った教育訓練の日時と内容など、受け入れている側でなければ分からない事項が中心です。 |
| 就業日・時刻の書き方 | 派遣就業をする日/始業及び終業の時刻 =あらかじめ定めた就業条件 | 派遣就業をした日/した日ごとの始業・終業した時刻及び休憩した時間 =実績 |
| 相手方への通知 | 通知義務はありません 派遣元管理台帳の記載事項を派遣先に通知することは求められていません。 | 記載事項のうち6つの事項について通知義務があります 派遣労働者の氏名/派遣就業をした日/その日ごとの始業・終業した時刻及び休憩した時間/従事した業務の種類/責任の程度/派遣就業をした事業所の名称・所在地その他の場所及び組織単位。1か月ごとに1回以上、一定の期日を定めて、派遣労働者ごとに書面・ファクシミリ・電子メール等により通知することとされています(法第42条第3項、則第38条)。 |
| 保存期間 | 労働者派遣の終了の日から3年間 | 労働者派遣の終了の日から3年間 |
2つの台帳はつながっています
派遣先から通知された内容は、派遣元管理台帳に反映することになります。もっとも、通知されるのは派遣先管理台帳の記載事項のうち6つだけですので、通知を受けただけで派遣元管理台帳の記載が揃うわけではありません。
3. 記載しなければならない21の事項
法第37条第1項および則第31条により、次の事項の記載が求められます。実務で記入する順に、5つのグループに分けて整理しました。
A|派遣する労働者について
契約ごとではなく、派遣労働者ごとに管理する部分です。
- 1派遣労働者の氏名
- 2協定対象派遣労働者であるか否かの別
- 3無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者かの別有期雇用の場合は、労働契約の期間も記載します。
- 4法第40条の2第1項第2号による60歳以上の者であるか否かの別
B|派遣先と体制について
労働者派遣契約書・就業条件明示書と一致している必要がある部分です。
- 5派遣先の氏名又は名称個人の場合は氏名を、法人の場合は名称を記載します。
- 6派遣先の事業所の名称
- 7派遣先の事業所の所在地その他派遣就業の場所及び組織単位
- 14派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
C|就業条件について
あらかじめ定めた就業条件を書く部分です。
- 8労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
- 9始業及び終業の時刻
- 10従事する業務の種類可能な限り詳細に記載することとされています。令第4条第1項各号に掲げる業務について派遣するときは、当該号番号を付します。
- 11従事する業務に伴う責任の程度付与されている権限の範囲・程度をいいます。役職がある場合はその具体的な役職を、ない場合はその旨を記載します。
- 15派遣就業をする日以外の日に就業させること、又は始業から終業までの時間を延長することを定めた場合の、その日又は延長できる時間数
- 16期間制限のない労働者派遣に関する事項有期プロジェクト業務、日数限定業務、育児休業等・介護休業等の代替要員としての業務がこれに当たります。
D|派遣期間中に、その都度記録していく事項
記載漏れが最も生じやすい部分です。作成した時点で完成する項目ではありません。
- 12派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項苦情の申出を受けた年月日、苦情の内容、苦情の処理状況を、申出を受け、処理に当たったその都度記載します。
- 17健康保険・厚生年金保険・雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無「無」の場合は、その理由を具体的に付します。手続終了後は「有」に書き換えることとされています。
- 18段階的かつ体系的な教育訓練を行った日時とその内容
- 19キャリアコンサルティングを行った日とその内容
- 20雇用安定措置を講ずるに当たって聴取した希望の内容聴取した日付と、派遣労働者が希望する措置の内容を記載します。
- 21雇用安定措置の内容実施した日付・内容・その結果を記載します。派遣先に直接雇用の依頼を行った場合は、派遣先の受入れの可否についても記載します。
E|紹介予定派遣の場合に追加される事項
該当する派遣労働者についてのみ記載します。
- 13紹介予定派遣に係る派遣労働者についての、当該紹介予定派遣に関する事項紹介予定派遣である旨、求人・求職の意思確認等の職業紹介の時期及び内容、採否結果、派遣先が職業紹介を受けることを希望しなかった場合等に派遣先から明示された理由を記載します。
4. 「派遣就業をする日」と「派遣就業をした日」の違い
派遣元管理台帳をめぐって最も判断に迷うのが、実績をどこまで書くのかという点です。ここは条文だけを読んでいると誤りやすいところです。
まず、予定された就業条件を記載します
法第37条第1項が挙げているのは「労働者派遣の期間及び派遣就業をする日」「始業及び終業の時刻」です。いずれも、派遣を開始する前に決まっている就業条件です。したがって派遣元管理台帳には、まず就業条件明示書に記載した就業日・就業時間等をそのまま記載することになります。
ただし、予定と実績が異なったときは反映が必要です
則第30条第3項では、派遣先から通知された派遣就業の実績が、あらかじめ派遣元管理台帳に記載していた就業の時間等と異なる場合には、その通知を受けた都度、異なった実績の内容を記載しなければならないとされています。業務取扱要領でも、同じ取扱いが示されています。
反映が必要になる場面の例
予定どおりに就業した日は、実績を毎日転記する必要は原則としてありません。反映が必要になるのは、次のように予定と実績が食い違った日です。
| 予定していた就業条件 | 実際の就業 | 台帳への反映 |
|---|---|---|
| 月~金 9:00~18:00 | すべて予定どおり | 原則として、実績を毎日転記する必要はありません |
| 9:00~18:00 | ある日だけ20:00まで勤務 | 差異の記載が必要です |
| 出勤予定の日 | 欠勤 | 差異の記載が必要です |
| 9:00~18:00 | 早退 | 差異の記載が必要です |
| 月~金の勤務 | 土曜日に臨時出勤 | 差異の記載が必要です |
実務での整理のしかた
台帳の本体には就業条件明示書の就業日・就業時間等を記載し、実績については別紙として就業実績を添付し、台帳側は「別紙参照」とする取扱いで足りると考えられます。台帳の様式そのものに毎日の実績欄を設ける必要はありません。
5. 労働局の調査で指摘を受けやすい5つの点
項目自体は揃っているのに、書き方を誤っているために指摘を受けることがあります。とくに次の5つは繰り返し見られる箇所です。
1.60歳以上か否かの別に、実年齢を書いてしまっている
記載が求められているのは、法第40条の2第1項第2号による60歳以上の者であるか否かの別です。期間制限の対象になるかどうかを判断するための記載ですので、実年齢や生年月日を書くべき欄ではありません。「60歳未満」「60歳以上」と記載するのが本来の形です。
2.従事する業務の種類が、就業条件明示書と違っている
派遣元管理台帳の業務の種類は、就業条件明示書と同じ内容で記載する必要があります。台帳を作るときに書き直してしまい、表現が変わっている例が少なくありません。労働者派遣契約書・就業条件明示書・派遣元管理台帳の3つは、突き合わせて確認されるとお考えください。
あわせて、業務の種類は可能な限り詳細に記載することとされています。「一般事務」といった大きなくくりだけでは足りないと判断される可能性があります。
3.苦情処理の欄に、苦情処理の「体制」を書いてしまっている
労働者派遣契約書や就業条件明示書には、苦情の申出を受ける者、苦情処理の方法、派遣元と派遣先の連携体制といった仕組みを記載します。これと同じ内容を派遣元管理台帳にも書き写している例が見られます。
派遣元管理台帳に記載が求められているのは仕組みではなく、苦情の申出を受けた年月日・苦情の内容・苦情の処理状況です。しかも、申出を受け、処理に当たったその都度記載することとされています。苦情の処理に関する事項を派遣労働者ごとに管理するのは、過去の苦情に応じた的確な対応を行うためのものとされています。
なお、苦情の申出を受けたことを理由として、その派遣労働者に不利益な取扱いをしてはならないとされています。
4.教育訓練の記録が、日付だけになっている
記載が求められているのは、段階的かつ体系的な教育訓練を行った日時とその内容です。実施した日だけでなく、実施した時間まで記載する必要があります。日付のみの記録になっている例は多く見られます。
ここでいう教育訓練は、法第30条の2第1項に規定する教育訓練(OFF-JT及び計画的なOJT)を指します。実施していても台帳に記録されていなければ、確認のしようがありません。
5.雇用安定措置の希望聴取が、後回しになっている
雇用安定措置を講ずるに当たって聴取した希望の内容は、聴取した日付とあわせて記載することとされています。
問題になりやすいのは時期です。継続して就業することの希望の有無は、その派遣労働者に係る派遣就業が終了する日の前日までに聴取しなければならないとされていますが、期限ぎりぎりに聴取したのでは、希望に沿った措置を講ずる時間が残りません。要領でも、労働者派遣の終了の直前ではなく早期に聴取し、十分な時間的余裕をもって措置に着手することが求められています。あわせて、実際に講じた措置については、日付・内容・その結果まで記載することとされています。
台帳を含め、調査で見られる書類が揃っているか確認できます
労働局の調査では、派遣元管理台帳のほかにも複数の書類が確認されます。「労働局 調査対応診断」では、14の設問に答えていただくことで、どこに手当てが必要かを整理できます。所要時間は3〜5分、費用はかかりません。
労働局 調査対応診断を受ける(全14問・無料)6. 保存期間と、その起算日
派遣元事業主は、派遣元管理台帳を3年間保存しなければならないとされています(法第37条第2項)。問題になりやすいのは、その3年をいつから数えるかです。
起算日は「労働者派遣の終了の日」
則第32条により、保存すべき期間の計算の起算日は、労働者派遣の終了の日とされています。契約を締結した日でも、派遣労働者が退職した日でもありません。
ここでいう「労働者派遣の終了」とは、労働者派遣に際して定められたその派遣労働者に係る派遣期間の終了をいいます。労働者派遣契約が更新された場合は、その更新に伴って定められた派遣期間の終了の日が起算日になります。
3か月以下の空白は「終了」として扱わない取扱いがあります
同一の派遣労働者を、同一の就業の場所及び組織単位で就業させる労働者派遣については、労働者派遣契約が更新されていない場合であっても、就業の終了の日から次の同一の派遣就業の開始の日までの期間が3か月以下のときは、労働者派遣の終了として取り扱わないとされています(法第40条の2第1項各号のいずれかに該当するものを除きます)。
いったん契約が切れた時点から3年を数えてしまうと、まだ保存義務が続いているうちに廃棄してしまうおそれがあります。同じ派遣先・同じ組織単位で就業が続いている場合は、この点をご確認ください。
7. 作成・保存の単位と、電磁的記録による作成・保存
台帳の中身が整っていても、どの単位で作り、どこに置いているかで指摘を受けることがあります。電子データで管理している場合の要件とあわせて整理します。
作成は事業所ごとに、有期雇用と無期雇用に分けて行います
派遣元管理台帳は、派遣元事業主の事業所ごとに作成しなければならないとされています(則第30条第1項)。あわせて、派遣労働者の雇用管理が円滑に行われるよう、有期雇用派遣労働者と無期雇用派遣労働者に分けて作成することとされています。ひとつづりにまとめている場合は、分け方を見直しておくのが安全です。
なお、労働基準法第107条第1項の労働者名簿および同法第108条の賃金台帳と、派遣元管理台帳をあわせて調製することは差し支えないとされています。三つを別々に作るか、まとめて作るかは、各社の実情に応じて選んでいただいて構いません。
保存も事業所ごとに行います
保存についても、当該事業所ごとに行わなければならないとされています。支店や営業所が複数ある場合に、本社で一括して保管しているだけでは足りないと判断される可能性があります。
紹介予定派遣は別に管理します
紹介予定派遣とそれ以外の派遣については、派遣元管理台帳を別々に管理することが適当とされています。記載事項が異なるためです。
電磁的記録によって「作成」する場合
書面によらず電磁的記録により派遣元管理台帳を作成する場合は、次のいずれかの方法によることとされています。
- 1電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
- 2磁気ディスク等をもって調製する方法
いいかえれば、はじめからパソコン上のデータとして作る形が想定されています。表計算ソフトや派遣管理システム上で作成し、そのままデータとして保持する運用は、これに当たると考えられます。
電磁的記録によって「保存」する場合
書面によらず電磁的記録により保存する場合は、次のいずれかの方法によることとされています。
- 1作成された電磁的記録を、電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法はじめから電子データとして作成したものを、そのまま保存する場合です。
- 2書面に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)により読み取ってできた電磁的記録を、同様のファイルにより保存する方法紙で作成した台帳をスキャンして保存する場合です。
紙で作った台帳をスキャンして電子で残す運用も、方法として認められていることになります。
満たさなければならないのは「直ちに出せること」です
上記のいずれの方法による場合も、必要に応じ電磁的記録に記録された事項を出力することにより、直ちに、明瞭かつ整然とした形式で、使用に係る電子計算機その他の機器に表示し、及び書面を作成できるようにしなければならないとされています。
保存の形式そのものより、求められたときにその場で画面に出し、印刷できる状態にあるかが問われる、とお考えください。
調査の前に確認しておきたいこと
担当者しか保存場所を知らない、パスワードが分からない、外部サービスにあるが当日その場から開けない、といった状態では「直ちに」表示・出力できるとはいえない可能性があります。誰がいつ求められても取り出せるか、画面の文字がつぶれずに読める状態か、印刷したときに項目が欠けないかを、あらかじめ一度試しておくことをおすすめします。
台帳の整備でお困りでしたら、ご相談ください
大阪労働局・兵庫労働局の需給調整部門で計4年間、派遣許可の審査と派遣会社の調査を担当してきました。実際に台帳を点検してきた立場から、どこを直せばよいかを具体的にお伝えできます。初回のご相談は無料です。
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