こんにちは。派遣の許可申請・調査対応、偽装請負・フリーランス法対策を専門とする社会保険労務士の東谷です。
今回から、少し趣向を変えたシリーズをお届けします。テーマは「派遣会社の定着率」です。このシリーズでは、公的統計などの「事実」と、そこから読み取れる「傾向」、そして私見としての「仮説」を分けてお伝えしていこうと思います。第1回の今回は、まず事実として、いまの派遣業界の姿を数字で確認したいと思います。
【事実】数字で見る、いまの派遣業界
厚生労働省が令和8年3月に公表した「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」から、主な数字を見ていきます。
- 派遣業界の年間売上高:9兆9,005億円(前年度比 9.4%増)
- 派遣労働者数:約220万人(前年度比 3.9%増)
- 派遣料金(8時間換算・平均):26,257円(前年度比 3.6%増)
市場は伸びていて、人数も単価もそろって増えています。ただし、その内訳を見ると、別の一面が見えてきます。
- 売上高10億円以上の事業所は、わずか1,985事業所(全体の6.0%)
- 1事業所当たりの平均売上高は、約2億9,800万円
つまり、大きく稼げている会社は一部で、多くは中小規模の事業所です。
では、働く人側の意識はどうでしょうか。日本人材派遣協会の2025年度調査では、こんな結果が出ています。
- 現在の就業先・派遣先に「満足・やや満足」:52.7%
- 一方で、自身のキャリア形成に「満足・やや満足」:23.7%にとどまる
- 有期雇用から無期雇用派遣に転換した理由の64.2%が「同じ派遣先の同じ部署で継続して就業できるから」
【傾向】この数字は、何を語っているか
では、これらの数字は何を示しているのでしょうか。ここからは私の推測をお話しします。
一つ目。市場の伸びは、人数の急増というより、単価の上昇に支えられています。ということは、「とにかく人をかき集める」だけの戦い方では、この波には乗りきれません。
二つ目。大きく稼げる会社は一部で、多くは中小規模の派遣会社です。体力に限りがあるからこそ、「今いる人・今ある取引を大事にする」ことの効き目が、相対的に大きいと考えられます。新しく採用するコストは、続けてもらうコストより、ずっと高くつきます。
三つ目。働く人は「安定して続けられること」を強く求めています。無期転換の理由の第1位が「同じ派遣先の同じ部署で働き続けられるから」だったことは、それを象徴しています。裏を返せば、"続けられる環境"を用意できる会社に、人は集まり、残るということです。
これらを並べてみると、見えてくることがあります。新規をひたすら追い続ける消耗戦よりも、「続けてもらう」ことの価値が、いま相対的に高まっている――ということです。
おわりに ― では、どうすれば「続けてもらえる」のか
数字は、いまの派遣業界が「単価は上がっているが、稼げる会社は限られ、派遣労働者は同じ派遣先で働き続けられることを求めている」という姿を映し出していました。
だとすると、次に考えたいのは――「では、続けてもらうには、どうすればいいのか」です。次回の【仮説編】では、定着率の高い派遣会社に共通することについて、私の考え(仮説)をお話ししたいと思います。私の専門である「法令の適正運用」が、実は定着とどうつながるのか、という視点も含めてお話しする予定です。
▼ まずは無料の「派遣会社 売上・定着率セルフ診断」で、今の状態を確かめてみませんか
ここで挙げたのは、あくまで業界全体の数字です。大切なのは、自社の実際の数字――採用にかかっている費用、辞める人が多いタイミング、派遣先ごとの採算――で、現状を確かめることです。
この記事でお伝えした「続けてもらうことの価値」が気になった方へ。この診断では、売上のつくり方(料金の協議材料、契約の更新意向の確認、新規営業の進め方)と、定着の仕組み(就業前のミスマッチ防止、就業初期の状態確認、派遣先との改善協議、退職理由の把握)の両面から、いまの運用を15の質問で確認できます。
所要約5分・無料・入力不要です。
→ 派遣会社 売上・定着率セルフ診断(無料セルフチェック)はこちら
https://srhigashitani.com/hakenstaffteichakudo-shindan/
診断の結果、気になる項目が出た場合は、そのままお気軽にご相談ください。
本を出版しました!
本書は、3年間、大阪労働局の需給調整事業部(派遣法の指導監督を行っている部署)で需給調整事業専門相談員として派遣会社や派遣先の企業、社労士や弁護士の方からの相談業務を担当していた筆者が、労働者派遣法のことが全く分からない方や派遣業務が未経験の方でも簡単に派遣関係書類(今回説明させていただいた労使協定や個別契約書等)が作成できるよう、記載例も掲載しわかりやすく解説させていただいています。
本書をご購入いただいた方につきましては、各種派遣関係書類を税務経理協会様のホームページからダウンロードしていただけます。
労働局の調査に頭を悩まされている派遣元の担当者の方や派遣先の担当者の方、社会保険労務士の先生方など派遣業務に携われる方は是非、ご一読ください!
本書は専門書のため、Amazonやジュンク堂書店、紀伊国屋書店等の大型書店にてお買い求めいただけます!


