ここんにちは。派遣の許可申請・調査対応、偽装請負・フリーランス法対策を専門とする社会保険労務士の東谷です。

前回のパート1では、就業条件明示書の前半の項目(業務の内容・責任の程度・組織単位・抵触日・就業日など)の落とし穴を取り上げました。今回のパート2では、後半の項目を見ていきます。地味に見えて、見落とすと調査で指摘されやすいところばかりです。

落とし穴⑥「苦情の処理」は申出先と連携体制まで書く

苦情処理の欄は、「対応する」とだけ書くのでは不十分です。派遣元・派遣先それぞれの苦情の申出先(担当者)を示したうえで、申出を受けたときにどのように処理し、派遣元と派遣先がどう連携するのか、その体制まで具体的に記載します。

担当者については、氏名や役職だけでなく、電話番号もあわせて記載しておくと、実際に苦情が起きたときにすぐ連絡がとれて安心です。連絡経路まで整理しておきましょう。


落とし穴⑦「契約解除の場合の措置」は"派遣労働者向けの説明"で書く

派遣契約が、派遣労働者の責任によらず中途解除された場合の、雇用の安定を図るための措置を記載する欄です。

ここでよく見かけるのが、派遣契約書に書いた契約解除の措置の文言を、そのまま就業条件明示書に写しているケースです。
これでも労働局から指摘されないこともありますが、本来は望ましくありません。

というのも、派遣契約書は派遣元と派遣先の"取り決め"を書くもので、たとえば「派遣先は派遣元に損害賠償する」といった、会社どうしの約束の言葉で書かれています。一方、就業条件明示書は派遣労働者本人に示す書類ですから、契約が解除されたときに本人にとって何がどうなるのか——新たな就業機会の確保に努めること、それができない場合は休業手当を支払うこと、やむを得ず解雇する場合も解雇予告手当など労働基準法上の責任を果たすこと、など——を、派遣労働者に向けて説明する言葉で書くのが本来の形です。


落とし穴⑧「就業日外・時間外労働」は"範囲"に注意

就業日以外の労働や、就業時間を超える労働をさせる場合は、その日数や時間数を記載します。

ここで注意したいのが、その内容が、派遣元と派遣労働者の労働契約や、派遣元の36協定で定められた範囲内でなければならないという点です。
就業条件明示書にだけ長い休日労働日数や時間外労働時間数を記載しても、労働契約や36協定の範囲を超える指示はできません。整合がとれているか、確認しておきましょう。


落とし穴⑨「福利厚生施設の利用」「派遣料金の明示」を忘れる

見落とされやすい項目が2つあります。

ひとつは福利厚生施設の利用等で、派遣先の給食施設・休憩室・更衣室などの利用や、制服の貸与といった便宜について、定めがあれば記載します。
もうひとつは派遣料金の明示です。派遣元は、派遣労働者に対して、派遣料金の額(またはその事業所の平均額)を明示する必要があります。

派遣料金額の記載は、時給・日給・月給のいずれで記載しても構いませんが、その単位もあわせて記載することが大切です。
たとえば「日額:9,000円」「時間額:1,500円」のように、金額と単位をセットで示します。
単位が抜けていると労働局から指導を受ける可能性もあるので注意しましょう。派遣料金の明示そのものを失念しているケースも少なくありません。


落とし穴⑩「紛争防止措置」で、許可なく職業紹介を書かない

派遣終了後に、その労働者を派遣先が雇用する場合の「紛争防止措置」を記載します。

ここで、職業紹介を経由する旨や紹介手数料を書いていることがありますが、有料職業紹介事業を行うには、職業安定法にもとづく許可が必要です。
許可を持っていないのに職業紹介を行う旨を記載していると、指摘の対象になります。

自社の許可の範囲と、記載内容が食い違っていないかを確認しましょう。

落とし穴⑪「社会保険・雇用保険の資格取得届」の有無を書く

社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険について、被保険者資格取得届の提出の有無を記載します。

書き方はシンプルで、すでに届け出ている場合は、本来は記載不要なのですが、一般的には「届出あり」と記載している派遣会社が多いです。

一方、まだ届け出ていない場合は、その理由を記載してください(たとえば「現在、必要書類を準備中であり、○月○日に届出予定」など)。



おわりに

パート1・パート2を通じて、就業条件明示書の主な落とし穴を見てきました。項目が多く、一つひとつに書き方のルールがありますが、逆に言えば、ポイントを押さえておけば防げる不備ばかりです。
「うちの就業条件明示書、ひととおり大丈夫だろうか」と気になったら、どうぞお気軽にご相談ください。

このnoteでは、これからも派遣・請負・フリーランスにまつわる実務の話を、分かりやすくお届けしていきます。


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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。就業条件明示書の記載事項や様式は、取引の実態や法改正により変わることがあります。具体的な作成にあたっては、当事務所にご相談ください。

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