こんにちは。派遣事業の実務を専門にしている社会保険労務士の東谷です。
派遣の実務でいちばん基本となる書類が、「労働者派遣契約書」です。
地味に見えて、実は労働局の調査で必ずと言っていいほど確認される、大切な書類です。
今回は、この派遣契約書に何を書かなければならないのか、そして作るうえでどこでつまずきやすいのかを整理します。
まず、「基本契約」と「個別契約」は別ものです
派遣の契約というと、取引全体の大枠を定める「基本契約」を思い浮かべる方が多いかもしれません。ですが、法律で作成が義務づけられているのは、案件ごとに結ぶ「個別契約書」のほうです。
基本契約だけで済ませ、個別契約書を作っていない、あるいは中身が不十分、というのは避けなければなりません。
個別契約書に「書かなければならないこと」
個別契約書には、法律で定められた記載事項があります。主なものを挙げると、次のとおりです。
- 業務の内容と、業務に伴う責任の程度
- 就業の場所と、組織単位(○○課など)
- 指揮命令者
- 派遣の期間、就業日、就業の開始・終了時刻、休憩時間
- 安全衛生に関する事項
- 苦情の処理に関する事項
- 派遣契約を解除する際の、派遣労働者の雇用の安定を図るための措置
- 派遣終了後の紛争を防止するための措置
- 派遣労働者の人数
- 派遣労働者を協定対象労働者(労使協定方式の対象)に限定するかどうか
- 派遣労働者を無期雇用または60歳以上の者に限定するかどうか
- 福利厚生施設(給食施設・休憩室・更衣室ほか)の利用に関する事項
太字にした2つの項目は、比較的最近の法改正(令和2年・2020年4月の同一労働同一賃金に関する改正)で加わった記載事項です。
ただ、こうした項目そのものの抜け以上に、実務で不備を指摘されやすいのは、次にご説明する「就業日や就業時間の書き方」です。
作り方でつまずきやすいポイント
実務でもっとも多く不備を指摘されるのが、就業日、就業の開始・終了時刻、休憩時間の記載です。
なかでも、シフト制の場合の「就業日、就業の開始・終了時刻、休憩時間」の書き方でつまずく派遣会社が非常に多く、労働局の調査でも指摘されやすいところです。
ポイントは、個別契約書とシフト表の組み合わせ方にあります。
個別契約書の就業日・就業の開始終了時刻・休憩時間の欄は、「シフトによる」という記載にとどめておいて構いません。
そのうえで、就業日と始業・終業時刻、休憩時間を記載した「シフト表」を別途添付しておけば、就業日等が特定できるため、不備とはされません。
逆に、シフト表を添付せず「シフトによる」とだけで済ませていると、就業日等が特定できず、指摘の対象になり得ます。ご自身の契約書とシフト表が、こうした形で整っているか、確認してみてください。
もうひとつ、意外と見落とされがちなのが、「派遣終了後の紛争を防止するための措置」の欄です。
ここに、派遣終了後にその労働者を派遣先へ職業紹介する、という記載をしている派遣会社が見られます。
しかし、有料職業紹介事業の許可を持っていない派遣会社の場合、職業紹介を行う旨を記載していると、労働局から指摘を受けます。 自社が持っている許可の範囲と、契約書の記載が食い違っていないかを確認しておきましょう。
このほか、業務の内容が「一般事務」などと抽象的すぎると、実態との食い違いを指摘されることがありますので、何をする業務かが分かるように記載することも大切です。
なお、派遣契約書は、一定の要件を満たせば、書面だけでなく電子メールなどの電磁的方法で作成・交付することも認められています。
労働局の調査でも必ず見られます
派遣契約書の記載事項は、労働局の調査で重点的に確認される項目のひとつです。記載漏れや記載の不備は是正の対象になりますので、日頃から記載事項を漏れなく、正確に作成しておくことが、調査対応の面でも安心につながります。
まず、確認しておきたいこと
シフト制の場合、就業日・始業終業時刻・休憩時間を記載したシフト表を添付できているか。紛争防止措置の欄に、自社の許可の範囲を超えた職業紹介の記載をしていないか。法定の記載事項がすべて盛り込まれているか。業務内容は具体的に書けているか。ひとつでも不安があれば、早めに点検しておくことをおすすめします。
おわりに
派遣契約書は、毎回使うものだからこそ、一度ひな型に不備があると、すべての案件に影響してしまいます。「うちのひな型は大丈夫だろうか」と気になったら、どうぞお気軽にご相談ください。
このnoteでは、これからも派遣・請負・フリーランスにまつわる実務の話を、分かりやすくお届けしていきます。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。派遣契約書の記載事項や様式は、取引の実態や法改正により変わることがあります。具体的な作成にあたっては、当事務所にご相談ください。
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