入社して間もない方から、こんな話を聞くことがあります。
- 「試用期間だから、合わなければ辞めてもらうと言われた」
- 「来週から来なくていいと、昨日言われた」
- 「本採用はしないと言われたが、理由は教えてもらえない」
採用する側からも、
「試用期間中なら、いつでも辞めてもらえますよね」
と尋ねられることがあります。
派遣法、偽装請負対策、フリーランス法に特化した社会保険労務士の東谷です。
先に結論をお伝えします。試用期間中であっても、会社が自由に従業員を辞めさせることはできません。雇用を終了するには、客観的に納得できる理由が必要です。
ただし、本採用後の解雇に比べると、試用期間中の解雇が認められる範囲はやや広いとされています。この記事では、どのような場合に解雇が認められるのかについて解説したいと思います。
1.試用期間中も、雇用契約は成立しています
まず押さえておきたいのは、試用期間は「お試しで、まだ雇っていない期間」ではないということです。試用期間中も、雇用契約はすでに成立しています。
一方、会社には、試用期間中の働きぶりや適性を確認し、問題がある場合には雇用契約を終了できることがあります。このような会社の権利は、最高裁判所の判決でも認められています(最高裁昭和48年12月12日判決)。
ただし、会社が自由に雇用契約を終了できるわけではありません。解雇するには、客観的に見て合理的な理由があり、社会的に見てもやむを得ないと認められることが必要です。 会社が単に「この人は合わない」と感じただけでは、十分な理由にはなりません。
つまり、試用期間中の解雇は、通常の解雇よりは認められやすいものの、自由に解雇できるわけではない、という位置づけです。
2.14日を過ぎると、解雇の予告が必要になります
会社が従業員を解雇する場合は、原則として、少なくとも30日前に伝える必要があります。30日前までに伝えなかった場合は、不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払わなければなりません(労働基準法第20条)。
試用期間中の方については、例外があります。働き始めてから14日以内であれば、この予告は要りません(労働基準法第21条)。
ただし、14日を超えて働いた人を解雇する場合は、試用期間中であっても予告が必要です。試用期間中だからといって、突然「明日から来なくていい」と解雇することはできません。
この点は、会社にもよく誤解されています。14日という期間は、解雇の予告が必要かどうかを判断するためのものです。14日以内であれば理由なく解雇してよい、という意味ではありません。
3.本採用をしない場合も、理由が必要です
試用期間が終わるときに、会社が本採用をしないと判断することがあります。これを「本採用拒否」といいますが、法律上は原則として解雇として扱われます。
本採用拒否が認められる理由となり得るのは、例えば次のような場合です。
- 採用のときに申告した経歴や資格に、重大な偽りがあった
- 正当な理由のない欠勤や遅刻を繰り返し、注意しても改まらない
- 会社の金品を無断で持ち出すなど、雇用を続けることが難しい重大な行為があった
一方、次のような理由だけでは、本採用拒否が認められにくいと考えられます。
- 会社が十分に仕事を教えていないのに、「仕事の覚えが遅い」と判断した
- ほかの社員と気が合わないというだけで、本採用を拒否した
- 体調を崩して休んだことがあるという理由だけで、本採用を拒否した
- 会社の業績が悪くなったという理由だけで、本採用を拒否した
ただし、これらはあくまで一般的な例であり、実際に本採用拒否が認められるかどうかは、個別の事情によって判断されます。
特に、仕事の能力不足や勤務態度を理由に本採用を拒否する場合には、会社が十分な教育や指導を行ったかどうかも重要になります。 注意や指導をしないまま「能力が足りない」と判断した場合、本採用拒否が認められにくくなることがあります。
4.試用期間の長さと、延長について
試用期間の長さに、法律上の決まりはありません。3か月から6か月とする会社が多く見られます。
ただし、あまりに長い期間は、働く人の立場を不安定なままにするため、問題とされることがあります。
会社が「もう少し働きぶりを見たい」と考えて試用期間を延長するには、就業規則に、試用期間を延長できる旨の規定が必要です。こうした定めがないのに、会社が一方的に延長することはできません。
延長する場合は、延長する理由や、今後どのような点を改善してほしいのかを本人に伝える必要があります。
5.試用期間中に辞めてほしいと言われたときの確認事項
試用期間中に、会社から「辞めてほしい」と言われた場合は、次の3点を確認してください。
① 理由を、書面で示してもらう
会社から解雇を告げられた人は、解雇の理由を書いた証明書を会社に求めることができます。会社は、求められた場合、その証明書を交付しなければなりません(労働基準法第22条)。口頭で「合わないから」とだけ説明された場合は、書面で理由を示してもらいましょう。
② 働き始めてから何日経っているかを確認する
14日を超えていれば、30日前の予告か、解雇予告手当が必要です。当日に「明日から来なくていい」と言われた場合は、手当の支払いを求めることができます。
③ 入社時に示された労働条件と、実際の働き方を見比べる
労働条件通知書や雇用契約書に書かれている内容と、実際の勤務時間、給与、仕事内容などが違っていた場合は、従業員から直ちに雇用契約を解除できることがあります(労働基準法第15条第2項)。
一人で対応するのが不安な場合は、最寄りの総合労働相談コーナーに相談できます。相談は無料で、予約も必要ありません。
6.会社の側が確認しておきたいこと
会社にとっても、試用期間の扱いは、後のトラブルにつながりやすい問題です。次の3点を確認しておくことをおすすめします。
- 就業規則に、試用期間の長さや延長できることが書かれているか
- 指導した内容を記録しているか
いつ、何を、誰が指導し、その後どう変わったか - 試用期間が14日を超えた人を解雇する場合に、必要な予告や解雇予告手当の支払いを行っているか
特に2つ目の指導記録は、会社が本採用をしないと判断した理由を説明する資料になります。日報や面談記録などに、指導した内容や本人の反応を残しておきましょう。
おわりに
試用期間は、会社が従業員の働きぶりや適性を確認するための期間です。ただし、会社が試用期間中の働きぶりなどを理由に雇用を終了するには、正当な理由と必要な手続きが求められます。
「試用期間中なら会社が自由に辞めさせられる」という考え方は間違いです。
働く人は、解雇の理由を書面で示してもらうことから始めてください。会社は、就業規則の内容と、教育や指導の記録を確認しておきましょう。
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