派遣法、偽装請負対策、フリーランス法に特化した社会保険労務士の東谷です。
今回は、派遣会社が作成しなければならない「派遣元管理台帳」を取り上げます。
この台帳は、一度作れば終わりではなく、派遣期間中に教育訓練や苦情への対応などを行った場合、その内容を書き足していく必要があります。
ところが、最初に台帳を作成したまま、その後の記録が十分にできていないケースがあります。
派遣元管理台帳には多くの記載項目があるため、今回と次回の2回に分けて、見落としやすいポイントをご紹介します。
1.そもそも「派遣元管理台帳」とは?
派遣元管理台帳とは、派遣会社が、派遣労働者一人ひとりについて、派遣先での仕事の内容や教育訓練の実施状況などを記録しておく書類です。
労働者派遣法第37条で作成が義務付けられており、派遣が終了した日から3年間、保存しなければなりません。
労働局の調査でも確認される重要な書類です。
特に注意したいのは、最初に必要事項を記載するだけでなく、その後に行った教育訓練や苦情への対応なども記録する必要があるという点です。
それでは、見落としやすい項目を確認していきましょう。
2.落とし穴①「協定対象派遣労働者かどうか」を記載していない
派遣元管理台帳には、その派遣労働者が「協定対象派遣労働者」に該当するかどうかを記載する必要があります。
協定対象派遣労働者とは、派遣会社が労働者の代表などと結んだ労使協定に基づいて、賃金などの待遇が決められている派遣労働者のことです。
台帳には、例えば次のように記載します。
- 協定対象派遣労働者である
- 協定対象派遣労働者ではない
基本的な項目ですが、記載漏れがないか確認しておきましょう。
なお、派遣元管理台帳には、記載する項目の順番について決まりはありません。必要な項目が記載されていれば、会社で使いやすい順番に並べても構いません。
3.落とし穴②「教育訓練の実施状況」を記録していない
派遣会社には、派遣労働者の能力を高めるため、計画的に教育訓練を行うことが義務付けられています。
そして、実施した教育訓練については、実施した日時と内容を派遣元管理台帳に記録しなければなりません。
例えば、次のような記載です。
- 実施日:2026年10月15日
- 実施時間:10時~12時
- 教育訓練の内容:ビジネスマナー研修
ここで注意したいのは、教育訓練を実施した「日」だけでなく、「時間」も記載する必要があるという点です。
日付だけしか記載されていない場合、労働局の調査で記載漏れを指摘されるおそれがあります。
教育訓練を実施したら、後回しにせず、日時と内容を記録しておきましょう。
4.落とし穴③「キャリアコンサルティングの実施状況」を記録していない
キャリアコンサルティングとは、派遣労働者が、これからどのような仕事をしたいのか、どのような能力を身につけたいのかなど、今後の働き方や仕事について相談することです。
派遣会社には、このような相談を受け付ける窓口を設け、派遣労働者に知らせておく義務があります。
ここで知っておきたいのは、キャリアコンサルティングは、派遣労働者の希望に応じて行うものだということです。
そのため、派遣労働者から希望がなければ、実施していないこと自体が問題になるわけではありません。
ただし、相談を希望する人が利用できるように、相談窓口を設けておく必要があります。
実際にキャリアコンサルティングを行った場合は、実施した日と内容を派遣元管理台帳に記録します。
例えば、次のような記載です。
- 実施日:2026年10月20日
- 相談内容:今後のキャリア形成や資格取得についての相談
なお、教育訓練とは異なり、キャリアコンサルティングについては、実施した日と内容を記録すればよく、実施時間まで記載する必要はありません。
この違いも覚えておきましょう。
5.落とし穴④「苦情への対応」を記録していない
派遣労働者から苦情の申出があった場合、その内容や対応した結果などを派遣元管理台帳に記録する必要があります。
ここで注意したいのは、派遣契約書や就業条件明示書に記載する「苦情の担当者や処理方法」とは、記録する内容が異なるという点です。
契約書などには、苦情があった場合に誰が対応するのか、どのように処理するのかを記載します。
一方、派遣元管理台帳には、実際にどのような苦情があり、会社がどのように対応したのかを記録します。
例えば、派遣労働者から「派遣先で契約内容と違う仕事を指示されている」という相談があった場合です。
このような場合は、苦情を受けた日、相談の内容、派遣先に確認したこと、どのように対応したかなどを記録します。
苦情が解決したかどうかも含めて、対応の経過が分かるようにしておきましょう。
6.落とし穴⑤「60歳以上かどうか」を記載していない
派遣元管理台帳には、その派遣労働者が「60歳以上であるかどうか」を記載する必要があります。
これは、60歳以上の派遣労働者については、派遣期間の制限が適用されないなど、法律上の取扱いが異なるためです。
例えば、次のように記載します。
- 60歳以上である
- 60歳以上ではない
ここで注意したいのは、法律で求められているのは、具体的な年齢ではなく、60歳以上に該当するかどうかという点です。
例えば「62歳」と記載すれば、60歳以上であることは分かりますが、「60歳以上:該当」などと明確に記載しておく方が分かりやすく、記載漏れも防げます。
おわりに
派遣元管理台帳は、一度作って終わりではありません。
特に、教育訓練やキャリアコンサルティング、苦情への対応などは、実施した後に記録する必要があります。
「後でまとめて記載しよう」と思っているうちに、記録漏れが生じることもあります。
必要な記録は、その都度、忘れずに残しておくことが大切です。
今回は、派遣元管理台帳で見落としやすい5つのポイントをご紹介しました。
次回のパート2では、今回取り上げなかった記載項目について、引き続き注意したいポイントを解説します。
「自社の派遣元管理台帳は、必要な記録ができているだろうか」と気になった方は、お気軽にご相談ください。
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