こんにちは。派遣の許可申請・調査対応、偽装請負・フリーランス法対策を専門とする社会保険労務士の東谷です。
定着シリーズの第2回です。
前回の【現状編】では、業界の数字を確認しました。市場は単価に支えられて伸びているものの、大きく稼げる会社は一部です。そして働く人は、「安定して続けられること」を強く求めていました。では、続けてもらうにはどうすればいいのか。今回は、これについて私が考えていることを、お話しします。
はじめに ― これは私の「考え」です
先にお断りしておきます。
ここから書くことは、統計で裏づけられた話ではありません。データと、これまで見てきた現場の様子から、私なりに考えていることです。
そのまま当てはまるとは限りませんので、読んだあとで、ぜひ自社の実際の数字で確かめてみてください。そのうえで、私が「定着率の高い派遣会社に共通している」と考えていることを、率直にお伝えします。
① 定着は「入口」でほぼ決まる
早期の離職は、就業を始めてすぐの時期(初日・1週間・1か月・3か月)に集中しているように思います。逆に言えば、この就業初期を乗り越えてもらう仕組みがあるかどうかで、定着率は変わってきます。
漠然と「最近どう?」と聞くのではなく、業務量は適切か、人間関係で困っていないか、指示は分かりやすいか――といった、本音を引き出す問いかけを、初期に意識的に行っているかどうか。ここが分かれ目になります。
② 離職の原因は、派遣先にあることが多い
「あの派遣先は、なぜかいつも1か月で辞めてしまう」。そう感じている会社は多いと思います。こうしたとき、原因は派遣会社の側よりも、派遣先の受け入れ環境や指揮命令の仕方にあることが少なくありません。
定着率の高い会社は、派遣先ごとの離職状況を数字で把握しています。そして、離職の多い派遣先には、受け入れ態勢の改善(マニュアルの整備や声かけの工夫など)を働きかけています。
もっとも、派遣先に改善を申し入れるのは簡単ではありません。だからこそ、数字で示すことが大切です。「最近よく辞めます」ではなく、「この1年で、5人中4人が1か月以内に交代しています」この形で切り出します。
そのうえで伝えたいのは、これが派遣先にとっても損だ、という点です。
交代のたびに、派遣先の社員が一から仕事を教え直すことになります。人が続かない職場は、紹介できる人も限られてきます。法令上も、派遣先には就業環境の維持や苦情への対応が求められていますが、それを前面に出すより、双方にとっての実害として話すほうが、受け入れてもらいやすいと思います。
③ ミスマッチは"事前"に防いでいる
良いことばかりを伝えて採用すると、働き始めた初日に「聞いていた話と違う」と感じて辞めてしまいます。定着率の高い会社は、現場の大変なところも含めて、採用の段階で正直に伝えています。入口で食い違いを減らしておくことが、結果的に定着につながります。
④ 定着の仕組みは、すでに法律の中にある
ここまで、入口のフォローや派遣先への働きかけを挙げてきました。「そんな余裕はない」と思われたかもしれません。
ただ、新しく何かを始める必要はありません。派遣法で義務づけられている運用の中に、定着につながるものがすでにあります。
- 就業条件明示書を実際の業務に合わせて正確に書くことは、そのまま入口の食い違いを減らすことになります(③)。
- 苦情の相談窓口を本当に機能させれば、それは初期のフォローそのものです(①)。
- キャリアコンサルティングは、働く人と一対一で話す機会になります。
- 雇用安定措置は、「この先も仕事がある」という見通しを伝えることにつながります。
もっとも、法令を守っていれば人が定着する、という話ではありません。守っていない会社が辞められやすい、というだけのことです。違いが出るのは、これらを形だけで済ませるか、中身のあるものにするかという運用の差です。すでに義務として行っているのですから、その中身を変えるほうが、ゼロから仕組みを作るより近道だと考えています。
おわりに ― 自社の数字で確かめてください
以上が、私の考えです。繰り返しますが、証明された事実ではありません。ぜひ、自社の離職のタイミングや、派遣先ごとの離職状況といった実数で、当てはまるかどうかを確かめてみてください。
次回の【実践編】では、これらを、「明日からできること」に落とし込んでいきます。初期フォローの具体的な進め方や、法令の運用を定着に活かす方法を、より具体的にお伝えする予定です。
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