有給休暇の申請書にある「理由」の欄を見て、「どこまで書けばいいのだろう」と迷ったことはありませんか。

  • 「『私用』では認められません。何に使うのか書いてください」
  • 「病院に行くなら、どこの病院か教えてもらえますか」
  • 「その日は忙しいので、別の日にしてもらえませんか」

病院名や家族の予定まで会社に説明しなければ、有給休暇を取れないのでしょうか。

派遣法、偽装請負対策、フリーランス法に特化した社会保険労務士の東谷です。

結論から言うと、有給休暇を何に使うかは、働く人の自由です。会社に理由を伝える義務はありません。理由の内容を見て、会社が有給休暇を認めたり断ったりすることもできません。

ただし、その日に休まれると仕事に大きな支障が出る場合には、会社が別の日に変更するよう求めることがあります。

この記事では、有給休暇を取るときに理由を伝える必要があるのか、会社はどのような場合に休む日を変えられるのかを解説します。




1.有給休暇は、会社に許可してもらうものではありません

有給休暇は、一定の期間働いた人に法律で認められた休暇です(労働基準法第39条)。

原則として、働く人が「この日に休みます」と日を指定すれば、その日が有給休暇になります。会社の承認は必要ありません。

申請書に「承認」や「決裁」という欄があると、会社が休んでよいかどうかを決めるように見えます。

しかし、会社ができるのは、仕事に大きな支障が出る場合に、別の日に変更するよう求めることです。




2.会社に理由を伝える義務はありません

有給休暇を何に使うかは、働く人の自由です。最高裁判所も、この考え方を示しています(最高裁昭和48年3月2日判決)。
そのため、会社は次のような理由で有給休暇を断ることはできません。

  • 「私用」と書いた申請を認めず、具体的な用事を書かせる
  • 通院を理由に、病院名や病名まで答えるよう求める
  • 旅行やレジャーに使うという理由で断る

申請書に理由を書く欄があるだけで、すぐに問題になるわけではありません。

ただし、理由を書かなかったことを理由に、有給休暇を認めないことはできません。理由欄には「私用のため」と書けば十分です。

会社が休む理由を尋ねるなら、なぜその情報が必要なのかを明確にしておく必要があります。仕事の予定を調整するためなら、確認すべきなのは休む理由ではなく、休む日です。




3.会社が休む日を変えるよう求められる場合

その日に休まれると仕事が正常に回らない場合、会社は有給休暇を別の日に変えるよう求めることができます。

これを「時季変更権」といいます。

ただし、単に「忙しい時期だから」というだけで、いつでも使えるものではありません。次のような事情を確認して判断します。

  • その人が休むと、仕事にどの程度の支障が出るのか
  • 代わりの人を手配できないのか
  • 会社が勤務日や人員を調整しようとしたか

会社が慢性的な人手不足を放置したまま、「忙しいから休まないでほしい」と求めることは認められにくくなります。

また、時季変更権は、有給休暇を別の日に取ってもらうためのものです。「今年は有給休暇を取らせない」という使い方はできません。




4.退職前にまとめて取るとき

退職日が決まったあと、残っている有給休暇をまとめて取りたいという場合もあります。

この場合、会社が有給休暇の日を変更するのは難しくなります。

時季変更権は、別の日に休んでもらうためのものです。しかし、退職日を過ぎれば、有給休暇を取ることはできません。退職日までに変更できる日がなければ、会社は別の日への変更を求められません。

一方、引継ぎが終わらないまま休みに入ると、仕事に支障が出ることがあります。トラブルを避けるためには、次のように準備しておくとよいでしょう。

  • 退職を申し出るときに、残っている有給休暇の日数を確認する
  • 引継ぎの予定と、有給休暇に入る日を早めに相談する
  • 引継ぎの内容を、口頭だけでなく書面でも残す

なお、有給休暇をあらかじめお金に換えることは、原則として認められていません。

ただし、退職によって使えなくなる有給休暇について、会社が任意で金銭を支払うことは認められています。必ず買い取ってもらえるわけではないため、会社に制度があるか確認してください。




5.そのほか、知っておきたいこと

パートやアルバイトにも有給休暇はあります

週の勤務日数が少なくても、条件を満たせば有給休暇を取得できます。
取得できる日数は、週の勤務日数などによって変わります。これを「比例付与」といいます。

「パートだから有給休暇はない」という説明は誤りです。

会社には年5日を取得させる義務があります

年に10日以上の有給休暇が与えられる人については、会社は、そのうち年5日を取得させなければなりません(労働基準法第39条第7項)。

本人が自分から取得しない場合には、会社が休む日を指定して取得させる必要があります。

使わなかった有給休暇は2年でなくなります

有給休暇を使える期間は、付与された日から2年間です(労働基準法第115条)。

そのため、使わなかった有給休暇を翌年に繰り越すことはできますが、それより前の分は順次使えなくなります。




おわりに

有給休暇は、会社が休んでよいかどうかを自由に決める制度ではありません。

何に使うかは本人の自由です。理由の内容によって、会社が有給休暇を認めたり断ったりすることもできません。

申請書に理由を書く欄がある場合は、「私用のため」と書けば十分です。

会社は、有給休暇の申請書や上司の対応が、理由を細かく聞いたり、理由によって取得を断ったりする運用になっていないか確認しておきましょう。



▼ ご相談はこちら

「有給休暇の申請の様式を見直したい」「年5日の取得義務にどう対応すればよいか」といった点でお困りの事業主の方は、お気軽にご相談ください。

→ https://srhigashitani.com/contact/

 

このnoteでは、これからも派遣・請負・フリーランスにまつわる実務の話を、分かりやすくお伝えしていきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。具体的な対応にあたっては、当事務所にご相談ください。

本を出版しました!

 本書は、3年間、大阪労働局の需給調整事業部(派遣法の指導監督を行っている部署)で需給調整事業専門相談員として派遣会社や派遣先の企業、社労士や弁護士の方からの相談業務を担当していた筆者が、労働者派遣法のことが全く分からない方や派遣業務が未経験の方でも簡単に派遣関係書類(今回説明させていただいた労使協定や個別契約書等)が作成できるよう、記載例も掲載しわかりやすく解説させていただいています。

 本書をご購入いただいた方につきましては、各種派遣関係書類を税務経理協会様のホームページからダウンロードしていただけます。

 労働局の調査に頭を悩まされている派遣元の担当者の方や派遣先の担当者の方、社会保険労務士の先生方など派遣業務に携われる方は是非、ご一読ください!

 本書は専門書のため、Amazonやジュンク堂書店、紀伊国屋書店等の大型書店にてお買い求めいただけます!